剱登山も国際的になったらしく、英語の他にハングルの案内表示が建てられていた。剱山荘前で雨具を収納し別山のコルをめざしてハイマツ帯を登る。残雪帯が多いが表面が融けているのでアイゼンは不要、夏道のガレ場を歩くより楽だ。この辺りからガスが晴れ始め、剱沢のカラフルなキャンプサイトや別山が霧の中から姿を現した。振り返ると剱岳が今回初めて姿を見せていた。雪渓を登り終えると、別山乗越の剱御前小舎にやっと到着だ。ガスが晴れたときの乗越からの展望は絶景だ。東北には剱沢の左に剱岳、右に別山、正面の雲の彼方に後立山連峰が見えるはずだ。西南には室道平が眼下に広がり右に奥大日岳、左に浄土山、その彼方に薬師岳が展望できた。
昨日の疲れがとれないらしく、早月小屋から剱岳山頂まで標準タイムが3時間半のところを、こまめに撮影したとはいえ5時間もかかってしまった。予報ではここ2、3日の天候は悪く、ガスの中ばかりを歩いても面白くないので、晴にならない限り薬師岳縦走はあきらめて室堂へ下ることに決めた。
(第3日)
朝、小屋を出るとガスの中だ。それでも未練がましく別山めざして尾根を登り始めたが、西方の奥大日岳方面の雲が特に厚く、遠く雷鳴さえとどろいていたので小屋へ引返し、雷鳥沢へ下り始めた。ガレ場の下り坂を慎重に下り、ガスが晴れ始めた色とりどりの雷鳥沢テントサイトを眺めながら、雪渓を下った。きょうは日曜日とあって、別山乗越へ向う多くの登山者とすれ違う時間帯だ。青空も見え出した室堂平を沢山の観光客に混じって室堂ターミナルに到着した。青空に映える雄山や剱岳を後にして、バスの車窓から見える大日岳や薬師岳を楽しみながらケーブルを乗り継ぎ立山駅へ下った。下界は蒸し暑く、少し残念な気分ながら、地鉄で上市駅へ向い、タクシーで馬場島へ帰りついた。蛇足ながらタクシーの正規運賃は約8600円だが、小型車並みに7400円にまけてくれた。馬場島付近からは剱岳は雲に隠れて見えず天候の悪さを暗示していた。立山ICに戻る途中の立ち寄り温泉つるぎ恋月で汗を流してから北陸道に入った。帰途、福井県で激しい雷雨に遭遇、一時PAに退避、雷雨をやり過ごしてから帰阪した。後で知ったことだが、この雷雨は敦賀でテントを吹き飛ばしてけが人がでたものだ。翌日には神戸の雷雨で5人死亡の事故が発生、このところ近畿から北陸にかけて不安定な天気が続いているので、山行を中止したのは正解だったようだ。
早月尾根(標高差2250メートル、水平距離8.7キロ)は黒戸尾根(標高差2200メートル、水平距離9.5キロ)に比べて標高差、斜度ともに厳しく日本有数の急登尾根だ。実際に登った感じでも甲斐駒より剱の方が厳しかった。登り易さから言えばトリッキーな別山尾根よりも早月尾根の方が登り易いが標高差や距離が長いのが難点だ。今回は天候に恵まれなかったが、高山植物の咲き乱れる早月尾根を存分に楽しむことができた。五色ヶ原は次の機会に是非訪れたいものだ。
(ガスの晴れ間に見えた剱山荘)
(あちこちに残る雪渓を通過) (剱沢キャンプサイト)
(お花畑を進む) (初めて姿を見せた剱沢) (しばしば雪渓を横断)
(ガスの晴れ間に運搬するヘリ)
(初めて姿を見せた剱岳)
(やっと着いた剱御前小舎)
(別山乗越から東北を望む、左:剱岳、中央:剱沢、奥:後立山(雲の中)、右:別山)
(別山乗越から西南を望む)
(雷鳥沢へ向って下る) (ガスっているみくりが池)
(大賑わいの玉殿の湧水前広場)
★道端の花