乗鞍岳へは多くの登山道があるが、日帰りピストン計画なので最短コースの阿多野郷(あだのごう)のアイミックス自然村からのアプローチだ。ネットで調べると中洞(なかぼら)権現尾根ルートは薮っぽい所もあるらしいので余裕を見て早朝2時半の大阪出発だ。高山からR361の木曽街道を進み、高根支所の先から野麦街道に入り、更に分岐して阿多野郷のアイミックス自然村に向った。きょうから関西、東海地方は梅雨明けらしく、阿多野郷から乗鞍岳がくっきりと望めたが、早朝以降はガスが取れなかった。アイミックス自然村から悪路の地道林道を車の底をこすりながら1.3キロほど進むと東谷ゲート手前に駐車スペースがある。谷沿いにはガスがかかり、今朝方まで雨らしくぬかるんだ林道が続いていた。
東谷の橋を渡り、所々に運搬を待つ唐松の丸太が積み上げられた林道を進み、真谷の橋を渡ると車の轍も消え草深い林道となる。白樺の茂る荒れた林道を進み、黒谷上流の溢水堰堤を飛び渡るとそのすぐ先で林道終点だ。水深5センチ位なのでスパッツで固めた登山靴でOKだ。ゲートから1時間弱で「乗鞍岳」の標識が雑草に埋もれて立っている。林道には草花が満ち溢れているのであまり退屈せずに歩ける。いよいよ登山道に入るが、刈り払いが行われたのは相当以前らしく、雨に濡れた笹の葉で下半身はぐしょ濡れだ。笹を掴みながら滑り易い急坂を上ると南面を巻くトラバース道となり、樹木の切れ目から南に山頂に雲を頂いた御嶽山が望めたが、それ以降は終日雲の中だった。中洞権現尾根に上がるとブナやオオシラビソなどの針広混交林となり、林の中をなだらかに進む。しばしばあまり密ではないが生い茂った濡れた笹をかき分けて進むので乾く暇がない。しかも水のたまった溝のようなぬかるんだ所を進むので水たまりを避けるのが大変だ。笹原林床の針葉樹林の疎林帯にモミジカラマツソウの群生地があり、白く輝いていた。森林限界に近づくと、笹原にナナカマドや背の低い針葉樹がまばらに生えた踏み跡の薄い道となり、尾根の東側が雲間から望めた。突然、目の前にゴーロ帯が現われて森林限界に到達だ。
(東谷の林道ゲート) (カラマツの地道林道を北上)
(雑草茂るシラカバ林道を行く)
(溢水堰堤をジャブジャブ))
(林道終点の草に埋もれた表示)(笹の雫でびしょ濡れになる道)
(トラバース道から御嶽山) (座頭の原下の急坂を上る)(座頭ノ原はブナやシラビソ混交林)
(笹原林床の疎林帯を行く)
(濡れた笹原をかき分けて進む)(混交林のぬかるみ道を行く)
(林の中のカラマツソウ群生地)
(針葉樹林帯を行く)
(笹林床疎林帯の薄い道を行く)
(疎林帯尾根から東側の視界)
(ナナカマドやダケカンバの道)(森林限界を越えるとゴー路帯)
飛び石伝いにゴーロ帯を上るとハイマツ帯の終端に「乗鞍岳」の標識が現われてほっとする。初めはハイマツの海に一筋の線があるので安心だが、すぐに何処が道だか判らなくなる。足探りで抵抗の少ない方をそろりそろりと進む。だんだん勘が働くようになり、シャクナゲの葉を頼りに進んだりしながら右往左往して深いハイマツの海を抜け出した。ルート外のハイマツ帯を遮二無二進むのは絶対無理だ。ハイマツの丈が短くなるとともにルートも判りやすくなり、短くなるとルート外でも歩ける。振り返ると朝に通った阿多野郷の集落が雲間から望めた。皿石原の稜線に近づくと風衝地が増え、ハイマツの根が白骨のような姿をさらしていた。千町尾根ルートとの合流点には中洞権現の石仏が建ち、北側に屏風岳が立ちふさがり、東へ皿石原の平地が続いている。東へ進むと南面が切れ落ち、斜面にお花畑が広がりウサギギクやヨツバシオガマなど色とりどりの花が咲き乱れていた。
(森林限界線を振り返る) (ハイマツ帯の標識が目印) (窪みの線を頼りに進む)
(足探りで道を探しながら進む)
(背丈のハイマツの下を覗いて進む) (やっと目印発見)
(点在する岩のペンキが道標) (雲間から見える阿多野郷) (稜線に近づくと多くなる風衝地)
(路傍のモニュメント) (皿石原の千町尾根合流点) (中洞権現)
(皿石原から屏風岳)
(稜線南面お花畑のウサギギク)(稜線お花畑のヨツバシオガマ)
ハイマツ帯を左へなだらかに下ると千町尾根と屏風岳との間の鞍部に広がるお花畑だ。石仏の鎮座するお花畑ではチングルマやミヤマキンバイが咲き、緑の絨毯が広がっていた。乗鞍岳-大日岳-屏風岳の稜線の裾をなだらかにトラバースする道を進む。2、3回、ゴーロ帯を横断し、剣ヶ峰と大日岳の鞍部にたどり着くとコマクサの群生地だ。ロープで保護された砂地の斜面にコマクサとハクサンイチゲが満開の時期を迎えていた。この辺りまで登って来ると疲労がピークに達し、数十メートルごとに息を整えるため立ち止まり、ゆっくりゆっくり登った。最後に、剣ヶ峰の岩稜に登りつき、やっと祠の建つ三角点に到着だ。山頂は畳平から登ってきた多くの登山者で溢れていた。折角の今年初めての3000メートル峰だが見晴しは全く駄目、足下の権現池や朝日岳が見える程度だ。時刻も遅いので早々に頂上を後にした。
(皿石原からハイマツ林を下る)(緩斜面のお花畑を緩やかに上る) (お花畑のチングルマ)
(お花畑のミヤマキンバイ)
(お花畑がなだらかに続く) (お花畑に鎮座する石仏)
(日影平-乗鞍岳間の道標)
(トラバース道を行く) (南面に広がる草原)
(ゴーロ帯で安全を祈る石仏) (何回かゴーロ帯を横切る) (山頂直下のハクサンイチゲ)
(高天ヶ原)
(乗鞍岳剣ヶ峰) (山頂直下のお花畑)
(岩稜を直登すると剣ヶ峰) (山頂下の権現池) (乗鞍岳三角点)
頂上から岩稜を大日岳めざして稜線を下って、振り返るとルート矢印は山頂を東へ巻くように付いており、判らなかったとは言え立ち入り禁止のルートを登ってしまったようだ。帰りはピストンなのでルートを間違うこともなく下りばかりなので楽だ。ただ、暗くならないうちに林道へ着きたかったのであまり休まずに下った。問題のハイマツ帯も、一度上りに通っており、また上部から見ると広く見渡すことができ、殆どルートを間違わずに戻れた。しかし、多分に悪路が多いので下り4時間は見ておく必要がある。参考までに、上りに7時間余もかかってしまった。ゲート前で着替え、日帰り温泉にも入らず往路と同じ経路で0時前に帰阪した。
一昔前に畳平から登ったことがあったが、今回、麓から登りたかったので阿多野郷ルートでピストンした。皿石原や山頂直下のお花畑が丁度花の季節を迎えており、中洞権現から山頂に至るアルペン的風景も素晴らしかった。また、スパッツが破れてしまうようなハイマツ帯の薮コギも、金輪際ハイマツに触れたくなくなるような貴重な経験だ。千町尾根コースは整備されているが、アイミックス自然村から中洞権現の千町尾根出合いまでのルートは、標識も少なく、自然に返りつつある所もあり、余裕をもった計画が必要だ。
(剣ヶ峰から北方を望む、左:権現池、中央:朝日岳、右:コロナ観測所)
(大日岳めざして稜線を下る)
(鞍部から大日岳を望む) (砂地のお花畑を下る)
(ゴーロ帯をトラバース) (ハイマツ帯をトラバース) (皿石原の阿多野郷分岐)
(中洞権現尾根を見下ろす) (これから下るハイマツの海)(下りの方がルートを見つけ易い)
(森林限界辺りから見えない中央アルプス(左)、御嶽山(右)を望む)
(やっと森林限界到着)
(ダケカンバと針葉樹の森を下る) (座頭ノ原到着)
(夕日に照らされた鎌ヶ峰) (草深い林道終点) (長い林道歩き)
★道で出会った花
ヤマルリトラノオ(林道) ヒメジオン(林道) ヤマホトトギス(林道)
ヤマホタルブクロ(林道) ウド(林道) ヤブテマリ?(林道)
ソバナ(林道) ヨツバヒヨドリ(林道) イタドリ(林道)
サワギク(林道) オミナエシ(林道) センジュガンビ(林道)
ヤグルマソウ(林道) ヤマハハコ(林道) トリアシショウマ(林道)
イチヤクソウ(座頭ノ原) カニコウモリ(座頭ノ原)
ミヤマコウゾリナ?(座頭ノ原)
ギンリョウソウ(座頭ノ原) エンレイソウ(座頭ノ原) ゴゼンタチバナ(混交林)
モミジカラマツソウ(混交林) ユキザサ(混交林) ツマトリソウ(混交林)
ハクサンシャクナゲ(皿石原) イワツメグサ(皿石原) コケモモ(皿石原)
ウサギギク(皿石原) エゾシオガマ(皿石原)
ヨツバシオガマ(皿石原)
ミツバオウレン(皿石平) チングルマ(皿石平) コイワカガミ(皿石平)
ミネズオウ(皿石原) ミヤマキンバイ(皿石原) コバイケイソウ(皿石原)
タカネスミレ(皿石原) ミヤマダイコンソウ(皿石原)
ミヤマバイケイソウ(皿石原)
アオノツガザクラ(皿石原) ヤマゼリ?(皿石原) ウラジロタデ?(皿石原)
ハクサンイチゲ(山頂) コマクサ(山頂) ?(皿石原)
クルマユリ(混交林) オオカサモチ(林道) キバナノヤマオダマキ(林道)
★ルート断面図
★地 図
(備考)この地図および断面図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平18総使、第90号)
(参考地図)
・山と高原地図 乗鞍高原
・2万5千分の1地形図 乗鞍岳、野麦
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