木曽駒ヶ岳(2956.3m)

 

★ひとこと   「桂小場から西駒山荘を経て木曽駒ヶ岳、濃ヶ池ピストン」

風雨の木曽駒ヶ岳三角点


★行った日   2014年8月4日(月) 曇後小雨 山域はガス 単独

          2014年8月5日(火) 小雨時々風雨 山域はガス 単独

          2014年8月6日(水) 霧雨後曇 山域はガス 単独

★コース

(第1日目)
高槻4:11(名神、中央道)=伊那IC(県道202)=8:19三滝駐車場8:35→桂小場8:49→送水管出合8:58→登山道入口9:05→ぶどうの泉9:32→野田場10:55→11:31馬返(権兵衛峠分岐)11:41→白川林道(奈良井宿)分岐11:48→12:21大樽避難小屋12:31→信大ルート分岐12:47→13:56津島神社14:02→胸突ノ頭14:43→茶臼山分岐14:49→西駒山荘15:27
(第2日目)
西駒山荘6:17→遭難記念碑6:37→6:47着替え(長袖→半袖)6:57→八合目7:09→頂上山荘分岐8:33→8:53(2956.3m)木曽駒ヶ岳8:59→中岳9:33→宝剣山荘9:52→駒飼ノ池10:19→10:26休憩10:58→濃ヶ池11:48→12:11八合目12:17→遭難記念碑12:44→西駒山荘13:00
(第3日目)
西駒山荘6:11→茶臼山分岐6:36→胸突ノ頭6:41→7:02津島神社(雨具脱)7:08→信大ルート分岐7:40→7:51大樽避難小屋8:01→白川林道分岐8:18→馬返8:23→野田場8:43→ブドウの泉9:20→登山口9:40→9:52三滝駐車場10:05(県道202、広域農道、県道15)=松川(県道15)=飯田IC12:00(中央道、名神)=高槻15:50

 中央アルプスの主峰木曽駒ヶ岳だ。伊那側の桂小場(かつらこば)を起点に改築オープンしたばかりの西駒山荘から木曽駒ヶ岳を経て宝剣岳(ほうけんだけ)、三沢岳(さんのさわだけ)をピストンの計画だったが、結果的に荒天のため木曽駒ヶ岳だけだ。ちなみに東駒とは甲斐駒ヶ岳を指し、伊那谷を介して対面にある木曽駒ヶ岳を西駒と称している。伊那ICから小黒川(おぐろがわ)に沿って県道を進み、桂木場付近が災害復旧工事のため少し手前の5、6台とめられる三滝駐車場利用だ。海の日以降お盆まで安定した晴れが続くのが通例だが今年は台風11、12号の襲来もあって、山日和が望めない日々の連続だ。きょうも山肌がガスに閉ざされたうっとうしい降り出しそうな空模様の中、出発だ。
 工事用ゲートの先で数台の重機が河床で唸りをあげているのを見ながら仮橋を渡ると大きなカツラの木のある桂小場だ。大木の所から昨夜の雨に濡れた夏草の茂る踏み跡を上り、笹薮っぽくなってきた坂道を強引に進むと送水管だ。送水管に沿って左へしばらく進むと登山道に合流、なだらかな道をちょっと進むと豊富な水場のブドウの泉だ。山ぶどうの蔦の絡まる山肌から湧いているところから名付けられたそうだ。ここからカラマツ林のなだらかなトラバース道が延々と続き、崩壊地を迂回して進むと流れの細い野田場(猪が害虫を落とすための水溜りを野田場という)の水場だ。渇水時は要注意だ。稜線出合の馬返で権兵衛峠からの道を合せ、その先で奈良井宿からの道と合流、シラビソが増えてきた笹原林床の道をしばらく登ると五合目の大樽(おおだる)避難小屋小広場だ。ベンチで小休止、熱いコーヒーで疲労回復、ここから標高差500メートルの胸突き八丁だ。すぐ先で信大ルートと合流、シラビソとツガの針葉樹林帯の急坂を休み休み登ると六合目のベンチもあるやっとこ平だ。北アルプスも見えるらしいがきょうは真っ白だ。濃霧でボーっとしたダケカンバが点在し始めた針葉樹林帯を心臓をパクパクいわせながら頑張ると大岩の積み重なった津島神社だ。ここでとうとう霧雨が始まったが合羽は暑いので、ひどくなれば傘をさすつもりでシャツのままだ。この辺りから高木はなくなり胸突ノ頭で急坂は終わりだ。すぐ先で稜線上に乗り、行者岩分岐だが展望は駄目なのでそのまま稜線を登る。行者岩展望所の先から稜線直登の冬道を右に分け、将棊頭山(しょうぎかしらやま)東側山腹のトラバース道を進む。途中から雨が降り出し、何とか傘でしのぎ、背の低いダケカンバや灌木の茂る花の多い道をしばらく進むと8月1日に改築オープンした木の香も芳しい西駒山荘だ。改装された旧建物も隣接し、大規模になったようだ。小屋周辺には7年前に蒔かれたコマクサが根付いて赤味がかった花が見頃だ。夕食は西駒山荘名物のカレーだ。きょうは三沢岳、宝剣岳を回って来られた男性単独行の方と2人の貸切だ。一晩中吹き荒れていたが新築の部屋、新しい寝具で最高の一晩を過ごせた。外気温10℃、下界の熱帯夜に比べて天国だ。

  (三滝駐車場工事用ゲート)   (工事中の県道を進む)     (桂小場のカツラ大木と祠)

(桂小場からヤブっぽい踏み跡へ) (送水管に出合って左へ)  (正規の駒ヶ岳登山道合流)

 (カラマツ林をなだらかに進む)  (水の豊富なぶどうの泉)    (カラマツの大木林を進む)

   (権現峠分岐の馬返)     (白川方面奈良井宿分岐)     (シラビソ林を進む)

    (大樽避難小屋)         (信大ルート分岐)       (六合目やっとこ広場)

      (津島神社)       (胸突ノ頭からなだらかな稜線)      (茶臼山分岐)

(見晴しのよい冬道分岐付近)(ダケカンバのトラバース道を行く) (新装オープンの西駒山荘)

 朝食後のコーヒーをご馳走になって完全武装で出発だ。コマクサの道からハイマツ帯に入り、稜線をなだらかに登り、将棊頭山を右に分けて直進すると大岩の積み重なった遭難記念碑だ。大正2年小学校集団登山で校長以下11人遭難死、慰霊碑ではなく記念碑となったいきさつは新田次郎著「聖職の碑(いしぶみ)」に詳しい。汗をかきだしたのでアンダーを半袖一枚に着替え、所々でチングルマの咲くハイマツの尾根道をなだらかに下ると、復路で通る予定の濃ヶ池(のうがいけ)分岐だ。ここから馬の背と称する鋭い岩稜続きを想像していたが、ガスで外界が閉ざされていたせいもあるが意外に穏やかな尾根歩きだ。草花が次々現れるハイマツ帯やちょっとした岩尾根を越え、頂上山荘を左に分け、少し直進すると濃霧に人影が浮かび上がり、岩稜の上が暴風雨の山頂だ。横殴りの雨になすすべもなく早々に下山だ。滑らないように慎重に急なガレ道を下り、中岳を登り返して下ると宝剣山荘だ。三沢岳や宝剣岳へ行く意欲は全く消えうせ、駒飼ノ池(こまかいのいけ)へ谷筋を下り始める。この谷筋は花の豊かな所だ。ハクサンイチゲやシナノキンバイなどが咲く雪渓の残る池、駒飼ノ池の畔を通り、梯子場もある急な岩場を下る。岩棚の下で風を避け傘をさして大休止、時々ガスが切れて眼下に広がる谷筋の残雪を眺めながら恒例の助六とラーメン、仕上げに熱いコーヒーで悪天候の疲労回復だ。谷筋をそのまま下る伊勢滝へのヤブっぽい道を右に分け、3ヶ所の雪渓を横切って、花の多いほぼ水平のトラバース道を進む。雪渓には踏み跡が雨に融けて見当らず、意外に硬い雪面にキックステップで慎重に足場を作って渡る。最後に川のようになったハイマツ帯の中の砂地の道をさかのぼると濃ヶ池だ。雪渓の残る濃ヶ池の左岸に沿って進み、小木のダケカンバ林の斜面をなだらかに登りつめると往路の稜線出合だ。濃ヶ池周辺のダケカンバや灌木帯の森は紅葉の季節には見所だ。正面に霞んだ天水岩を眺めながら稜線をなだらかに登り、遭難記念碑を過ぎ、見晴しが期待できないので将棊頭山を省略して西駒山荘へ到着だ。このまま下山可能な時刻だったが、時々下界が見える状況だったので、あすのこの付近からの展望を期待してもう一泊することにした。悪天候にもかかわらず今夜は団体さん13人を含む賑やかな山小屋だ。

(木の香も芳しい食堂で朝食)(コマクサを眺めつつ小屋を出発)(なだらかなハイマツ帯を行く)

  (稜線のチングルマ群落)    (帰りに通る濃ヶ池分岐)   (ガスに覆われた馬の背へ)

   (風雨の岩稜を登る)     (暴風雨の木曽駒ヶ岳山頂)   (宝剣山荘横から沢筋へ)

 (風雨をついてガレ場を下る)   (花の多い谷筋を下る)      (梯子場の岩場を下る)

   (雪渓を3箇所横切る)      (お花畑を行く)              (濃ヶ池)

   (濃ヶ池にある残雪)       (ダケカンバ林を登る)      (往路の稜線出合)

   (将棊頭山の天水岩)     (大正2年の遭難記念碑)   (コマクサの西駒山荘帰着)

 朝になってもガスは不変だ。台風12号が九州の近くを動かず気圧配置は殆んど変わらず展望豊かな将棊頭山の期待は消滅だ。そうと決まればさっさと下山だ。相変わらず視界のない稜線を下り、津島神社で雨具を脱ぎシラビソ林を黙々と下る。大樽避難小屋を過ぎると薄日がさし、3日目にして始めての太陽だ。下るに従ってだんだん暑くなる日差しに辟易しながら三滝駐車場へ帰着だ。こちらへ来るといつも疲れを癒す松川の清流苑へ、残念ながら水曜日は定休日だ。仕方なく、駒ヶ根まで戻るのもしゃくなので途中に日帰り温泉を探しながら南下、見つけることができず飯田ICから3日間の汗まみれのまま帰阪した。
 前回の秋山郷シリーズに続いて展望なしの雨山行だったが、しっとりと濡れたシラビソ林もおつなものだ。このルートは高山植物も豊富、特に濃ヶ池カールは見事だ。晴天であれば西駒山荘から木曽駒ヶ岳へ至る稜線からの展望が素晴らしいはずだ。
 (追記)新田次郎著「聖職の碑」を読み直してみたが、当時とほぼ同一のルートをたどっているので実感をもって遭難時の様子が理解できる。生徒の登山ルートは桂小場−胸突き八丁−将棊頭山−濃ヶ池−駒飼ノ池−宝剣山荘(旧伊那小屋)、現在は将棊頭山の稜線をはずして東側の山腹の道だ。濃ヶ池で生存者が一夜を明かしたと思われる大岩の上には観音菩薩像が安置され、大正2年の遭難後大正3年に将棊頭山鞍部に西駒山荘とその山頂下に遭難記念碑が建立。毎年箕輪中学2年生による駒ヶ岳登山が行われている。

   (霧雨の早朝小屋を出発)   (濡れたトラバース道を下る) (何も見えない行者岩展望所)

    (シラビソ林を下る)      (津島神社で雨具を脱ぐ)   (ツガとシラビソの道を下る)

  (大樽避難小屋で小休止)     (道端の妖精の帽子)       (野田場の水場)

(木漏れ日のカラマツ林を下る)  (桂小場ルート登山口)     (やっと三滝駐車場に到着)

★道で出会った花

  オオバギボウシ(桂小場)    ミツバツチグリ(桂小場)    フシグロセンノウ(桂小場)


  ツルアジサイ(ぶどうの泉)   ツリフネソウ(ぶどうの泉)     イヌトウバナ(野田場)


キバナノヤマオダマキ(野田場)    セリバシオガマ(馬返)    カニコウモリ(大樽小屋)


   ゴゼンタチバナ(六合目)     コガネギク(六合目)     トリアシショウマ(胸突ノ頭)


   イワオトギリ(胸突ノ頭)    エゾシオガマ(茶臼分岐)    クルマユリ(茶臼分岐)


 キバナノコマノツメ(茶臼分岐)   ナナカマド(西駒山荘)     ツマトリソウ(西駒山荘)


    イワカガミ(八合目)       ミネズオウ(八合目)     アオノツガザクラ(八合目)


    イタドリ(馬の背)        イワツメクサ(馬の背)     タカネツメクサ(馬の背)


   アカモノ(馬の背)        ヨツバシオガマ(馬の背)   ミヤマシオガマ(木曽駒ヶ岳)


  ハクサンイチゲ(駒飼ノ池)   ミツバオウレン(駒飼ノ池)  ミヤマダイコンソウ(駒飼ノ池)


 ミヤマシシウド?(駒飼ノ池)  イワベンケイ雄株?(駒飼ノ池)イワベンケイ雌株?(駒飼ノ池)


   チングルマ(駒飼ノ池)      シナノキンバイ(雪渓)      ミヤマキンバイ(雪渓)


    タカネヨモギ(雪渓)      オオヒョウタンボク(雪渓)     ユキザサ(濃ヶ池)


   マイヅルソウ(記念碑)    キバナシャクナゲ(記念碑)    コマクサ(西駒山荘)


   ヤマハハコ(西駒山荘)     ウサギギク(西駒山荘)    イブキトラノオ(西駒山荘)


  タカネニガナ(西駒山荘)     イワギキョウ(西駒山荘)   モミジカラマツソウ(胸突ノ頭)


   カラマツソウ(胸突ノ頭)    ハクサンフウロ(胸突ノ頭)    イチヤクソウ(大樽小屋)


   ヤマホトギス(野田場)    ヤマホタルブクロ(野田場)     ヤマボクチ(ぶどうの泉)


★ルート断面図

★地  図

 (備考)この地図および断面図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平18総使、第90号)

(参考地図)
・山と高原地図       木曽駒・空木岳・中央アルプス
・2万5千分の1地形図  木曽駒ヶ岳

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