剣ヶ峰は文字通り360度の景観だ。雲海の彼方に北ア、八ヶ岳、南ア、中アが浮かぶさまは壮観だ。富士山は駄目だったが穂高連峰や御嶽山の山のひだまで視認できた。帰途は長丁場が待っているので早々に山頂を後にした。下山中、岩塊原を過ぎたあたりで、天気が良いのに一羽の雷鳥に遭遇、と思ったら岩陰から次々姿を現し、5羽の子連れだ。進む方向もこちらと同じ方向、雷鳥一家を先導にしばらく道を下った。中洞権現を過ぎると千町尾根の緑の絨毯のハイマツコギになるが、往路と違って乾燥しているため難儀せずに下ることができ、順調に奥千町避難小屋に戻った。
世話になった小屋に目礼して、ぐっと軽くなったザックを担いで田ノ原をなだらかに下る。千町ヶ原を過ぎ、標高2000メートルを切ると樹林帯に入り、陽光をさえぎってくれるので楽だ。中間点付近の樹林の急坂から、登る時には気づかなかったが古い丸太階段の埋め込みボルトが目立ち、つまずかないように注意が必要だ。疲れた身体に鞭打って急坂を頑張ると丸黒山(まるくろやま)だ。ここから歩き易い道となり、枯松平(かれまつたいら)休憩所から旧道を通るが、水場は水草で覆われ、殆んど涸れていた。岩井谷乗越から展望のない日影平山を経て日影峠へ、林道を経て中高生が運動中の交流の家前の広場に帰り着いた。
乗鞍岳は観光地化し、真に山を愛する人からは敬遠気味に扱われているが、今回のコースは1日歩いても殆んど人に会わず、静かな自然豊かなところだ。特に、高山植物、高層湿原、標高に見合った樹相の変化など、緑のハイマツ絨毯歩きも含めて素晴らしい所だ。
(小屋を後にして長丁場出発)
(雲がかかり始めた乗鞍岳)
(かんかん照りの千町ヶ原)
(ガンバリ坂のカラマツ林を下る)
(枯松平休憩所から旧道へ) (ミズナラ平の樹林帯を下る)