ここしばらく秋晴れの続く山日和、快晴の予想される日曜日とあって、紅葉狩りの混雑が予想される大台ケ原だ。早朝ゆえ途中はあまり渋滞することもなく比較的順調に大台ケ原ドライブウエイを進んだが、朝の７時頃にもかかわらず川上辻辺りから対向車線が縦列駐車の行列だ。方向転換もままならず、ノロノロ運転で満杯の大台ケ原駐車場を周回し、車道をゾロゾロ登ってくる登山者を横目に引き返し、川上辻のはるか下方に路駐だ。帰りは渋滞が予想されるので、できるだけゆっくり遠回り周回だ。川上辻を起点に、三津河落山（さんづこうちやま）から大台辻を経て添谷山か、体力がもてば御座�ｰへ向い、大展望の笹原の三津河落山や岩峰の御座�ｰ、尾根筋のブナの黄葉などを楽しむとともに、初めてのコブシ峠・大台ケ原筏場道を探勝の目算だ。
　露に濡れた笹原が予想されるので今秋初めてのスパッツで足元を固めて出発だ。川上辻の登山口から笹原の踏み跡を辿り、帰りに通る予定の筏場道を右に分け、ネットに沿ってなだらかに登る。笹原のミヤコザサは背は低いが濃密で沢山の露を含んでいるためスパッツは必需品だ。落葉広葉樹の疎林帯を覆う笹原林床の一筋の踏み跡を辿って徐々に高度を上げ、県境尾根通りに登ると大石の散在するヤセた山頂がナゴヤ岳だ。一旦鞍部へ下り、枯死した木々の目立つ疎林帯の笹原を朝日を浴びて穏やかに登り、岩稜帯を乗り越えると如来月山頂だ。数本の針葉樹で薄暗い山頂を後にして、笹原の広い稜線を北へ少し下ると、枯死して横倒しになった大木の根の先端に誰かがつけた山名板が風景によくマッチした三津河落山頂上だ。ここは僕の最も好きな風景のひとつで、きょうはこのために来たと言っても過言ではない。風の強い山頂から笹原が西尾根の日本岳と東北へ延びる県境尾根との間に広がり、北方正面に台高の名だたる峰々が姿を見せるさまは雄大だ。また、西には笹原越しに大峰山脈、東には山稜越しに日出ヶ岳が望める。笹原には幾筋もの薄いけもの道？、稜線上にはひときわ目立つ踏み跡があり、その幾何学模様が笹原のアクセントだ。山頂を独り占めして十分に景観を楽しんでから、台高の山々を正面に見て北尾根を下り始める。

（川上辻の手前から縦列駐車の列）　　（川上辻の登山口）　　　　（筏場大台ケ原線起点標識）

    （ネット沿いに笹原を進む） 　（ナゴヤ岳へ笹原ブナ林を登る） 　　（ナゴヤ岳山頂付近）

　疲れた身体に鞭打って、緩斜面の筏場道をゆっくりゆっくり登ると斜めになった日差しに陰るコブシ峠だ。ここから初めて通る筏場道だ。一見古道らしい立派な道を５分ほど進むと通り過ぎそうな岩陰に湧き水だ。名札が見当たらないが金明水のようだ。しばらく砂礫で埋まった所や倒木が折り重なった道を進むと路面崩落だ。ロープの垂れた涸れ沢へ下って対岸の路面に上がる。すぐ先の深い谷を安心橋で渡る。橋上から上流を眺めると樹間から見える細い数段の斜瀑の連なりが奇麗だ。枝尾根を巻きながら等高線に沿てなだらかに高度を上げていくが、岩壁をヘツル個所や倒木も多く、疲れ果てた身体には見かけよりしんどい道だ。かつてのメインルートを思わせる鉄の桟道や橋梁、岩壁を切り開いた歩道など、点在する黄葉に癒されながら進むと笹原の道だ。やっと川上辻で車道に降り立ち、車の姿のないすっきりした車道を少し下ると路駐地点だ。ドライブウエイから大峰山脈に沈む夕日をチラチラ見ながら進むが、伯母峰トンネルで車列に追い付き、下市辺りまでノロノロ、あとは順調に帰阪した。
　晴天に恵まれ、大混雑の大台ケ原だが、きょうのルートは一人の登山者にも会わず静かな大台ケ原を楽しむことができた。第１にミヤコザサに覆われた三津河落山から望む大峰、台高の雄大な山容、第２に御座�ｰから望む紺碧の空を切り取ったような大台ケ原の山稜、第３に台高縦走路の黄葉したブナ林、などが素晴らしかった。ただし、起伏に富んだ県境尾根に加えて倒木や路面崩落など距離や標高差以上に疲労困憊だ。

　 （整備された面影の残る道） （古道の美しい石積みの残る道）　 　　　（風情漂う古道）